20メートルを走ればよいの真意

「20メートルを逃げればよい」の真意

先日フジテレビで「少女ワイセツ目的殴打事件」の説明の際、「20メートル逃げれば良い」との説明がなされました。恐らく当研究所の研究結果を援用しての説明だったと思います。

「20メートル逃げれば良い」が誤解を生みそうですので確かな意味をお伝えしておきたいと思います。

子どもを襲う犯罪者の気持ちは、子どもが20メートルを走って逃げ切り追いつけず、さらに距離が詰まりそうもない状況下にある場合、犯罪者は追いかけることを確かに諦めます。

具体的にいえば15メートル追いかけた段階で「駄目かな」という気持ちが強くなり、20メートルの地点で「これ以上追いかけても駄目だ。やめよう」と言う気持ちが支配します。(ミネルブア書房刊、「犯罪からの子どもの安全を科学する」。小学館近刊、犯罪と地震からの危機「その時どうする」)。

 こうした「気持ち」と「距離」の関係の抽出は、その気になって子どもを追いかけた複数の元犯罪者、及び複数の普通の青年(架空であるが「子どもを襲うとやるきになった」)と子どもが追い駆けっこした実験結果に基づいたものです。(当研究所作成ビデオ参照)。

  なぜ「諦める気持ちが生まれる」か。

犯罪者が犯罪の実行に際して、ともかく心掛けることは「良い獲物を楽して手に入れ、しかも捕まらない」ということです。

ですから犯罪者は、楽して獲物に近づき(手に入れ)、なおかつ捕まらない(逃げやすい)ように努力します。

逆に言えば、犯罪者の犯行は、手に入れやすく逃げやすいという条件が満たされていると思えば、どこでもいつでも噴出します。犯罪者の「やる気」です。(この「やりやすい」「やる気」の構造に関しては新潮新書、「犯罪者はどこを見ているか」参照)。

なぜ20メートルで「やる気」が失せるのか。理由は2つあります。

 子どもが20メートル逃げる、それを犯罪者が追いかける。こうした追いかけっこ状況を想像してみて下さい。

「やりたい気持ち」に駆り立てられている犯罪者といえども、獲物を手に入れるには20メートルは楽な距離ではありません。実際、20メートルを走ってみてください。

また犯罪者は追いかけながら考えています。慌てふためき叫びながら走る子どもを、息せき切って追いかけている大人を通行人や近所の人が見て「どうにもおかしい」と判断しませんか。きっと通行人や近所の人は、犯罪者の後を追いかけて行くでしょう。結果として犯罪者は捕まります。犯罪者はそれが怖いのです。

追いかけている犯罪者にとっては、損益計算からして益(可愛い女の子)よりも損(捕まる)危険性の勝るポイントが20メートルということなのです。狡猾な犯罪者は、息の続く限り追いかけるものではありません。損益を考えながら襲います。

今回の事件現場になぜ私どもが実査に行ったかというと、通常のこの種女子児童被害事件に比較し、明らかに「異常と思われる事件」だったからです。異常というのは、①事件の起こる前に前兆もなく、②被害児と面識関係もないのに、③夕刻とはいえ視線がまだ通る場所で、④突然襲いかかり、⑤これほどの損傷を少女に与え獲物をみるめもむごく痛めつけている(普通、可愛いままで襲いたい)、⑤しかし目的を達してない、達せそうにないと見ると、さほど離れていない娯楽場のトイレ奧に逃げこみ(犯罪者は犯行後可能な限り遠くへ逃げようとする)、⑥呼びかけに応じて素直に出てきたらしい、という6つの点で感じ取ったことでした。

もし、このような犯罪が、本当に日本で通常の状態で起こったならば、これは犯罪発生に画期的な、あるいは欧米で稀に見ることができない犯罪が我が国でも生じた可能性が高いと考えられます。実際には、この事件は、昭和30年代ま言われたパターンの犯罪ではないか、と推測された結果、現場に行ったのでした。

朝日新聞に体験型安全教育プログラムが掲載されました。

6月8日の朝日新聞朝刊に、弊所の体験型安全教育プログラムの記事が載りました。記者の方(男性、小学1年生のお子さん有)が、とことんプログラムを試してくださいました。体験的で実践的なとても良い記事です。子どもの事件が相次いでいる今、ぜひ、読んでみてください!

小学校、特別支援学校、高等学校での体験型安全教育

先週は、青山小学校の放課後クラブ、八王子の特別支援学校、東村山の高等学校で授業を行いました。すべて体験型で、発達段階に沿った内容で行いました。

私たちは実際に、犯罪者との実験、研究を基にプログラムを立てています。やみくもに走る、声を出すのではなく、犯罪者の行動に沿いーたとえば、何メートル先から狙ってくるか、どういう子どもを狙ってくるか、などープログラムを作っています。いま、こういう授業がとても必要になってきています。事件のない世の中であってほしいのですが、実際に、事件が起きてしまう昨今、たくさんの子どもたちに、この授業を受けていただきたいと思っています。ぜひ、親子での参加、お待ちしています。私たち主催のワークショップは7月29日、文京区教育の森で行います。お申し込みは、こちらまで info@safety-educaton.org

茨城県龍ヶ崎市の女児殴打事件現場実査報告①

茨城県で7月14日に起きた、女児殴打事件の現場実査に行ってまいりました(7月15日)。

詳しい現場報告は、こちらに記しました。

また、子どもたちに気を付けてほしい危ない場所、人については、こちらに掲載してございます。

http://www.ri-step.co.jp/%E5%AD%90%E3%81%A9%E3%82%82%E3%81%AE%E5%AE%89%E5%85%A8%E7%A0%94%E7%A9%B6%E6%B4%BB%E5%8B%95/

読売新聞コメント「不審者情報共有できず」

7月5日読売新聞に「不審者情報共有できず」という記事が掲載され、清永のコメントものりました。
「共有すべき前兆事案の基準がないと今後も今回と同じような連携不足が起きる可能性がある。国や自治体は地域の実情に合わせた判断基準を示す必要がある。共有した情報に基づき、学校、家庭、地域、警察が警戒レベルを一緒に上げ下げして行動することが重要だ

前兆の質と量を測ることは非常に難しいですが、
あとから「そういえば」、「ああしていれば」ということを繰り返すのではなく、基準を作り、その場その場に応じた対応をする努力をするべきだと思います。

練馬児童刺傷事件について

今回の練馬の児童刺傷事件ですが、「不審者がわからない人が突然襲ってきたら防ぎようがない」というコメントが新聞に載っていました。しかし、実はこれは誤解で、ほとんどの事件の場合前兆があります。この前兆を捉えて対処するのが大人の役割なのです。不審な車がずっと止まっている、不審な人がずっと電信柱の陰でたっている、あとから「そういえば」ということはたくさんあります。早くに気付いて警察に相談する、声をかける、と言ったことで未然に防げることは多々あります。どうしようもない、とあきらめるのではなく、早くに前兆を捉えることが大切です。

「逮捕の男、再三トラブル=隣の校区で「注意情報」―男児切り付け事件・東京
時事通信 6月28日(金)23時9分配信
 東京都練馬区の小学校前で男児3人が切られ、重軽傷を負った事件。銃刀法違反容疑で逮捕された男(47)は、現場から約500メートルの一戸建てに母親と住み、庭先で奇声を上げて通報されるなど近所とトラブルを繰り返していた。
 男の自宅は事件があった学校の隣の小学校の校区。この校区では4日前、登校に付き添っていた父親が殴られる事件が発生。今回逮捕された容疑者とよく似た男による事件が続き、保護者の間で注意を呼び掛けるメールが回っていた。
 男の母親によると、男は以前営業関係の仕事をしていたが精神疾患で通院し、3年ほど前から仕事に就いていなかった。28日も病院に行く予定だったが、午前11時半ごろ「旅行に行く」と言い出し、車で家を出たという。母親は「世間をお騒がせして申し訳ない」と話した。
 近所の住民によると、男は以前から何度も庭先で大声を上げるなどしており、通報されパトカーが来たこともあった。 」

練馬区児童刺傷事件についてー子どもたちに地域で安全基礎体力をつける

昨日、栃木県防犯リーダー養成講座で講義を行ってまいりました。練馬事件の翌日でもあり、参加者の皆さんは真剣に耳を傾けてくださいました。子どもの安全確保をするには、どうしたらよいのか、昨日のような事件を起こさせないためには何ができるのか、考えながら講義を進めてまいりました。

今回事件では、見守ってくださっていた交通指導員の方が身を挺して子どもたちを守ってくださいました。怖かったことともいますが、子どものためを思って勇気ある行動をしてくださいました。指導員の方の行動は、事件があれ以上悲惨なものにならずに済むための抑止効果があった、と思います。本当に頭が下がります。

しかし、それでよいのでしょうか。大人が命を懸けて子どもを守ってくれるのであれば、子どもも、自分で頑張る力をつけていくことが必要ではないでしょうか。自分で守る力が弱いうちは守っていただく部分が多くてよいのですが、だんだんと自助から共助へと力を蓄え、一緒に街を安全にする大人に育っていかなければならないと思います。

今、安全教育は試行錯誤されながらなされています。しかし、私たちの研究結果では、場当たり的な対蹠的な教育では、子どもたちが実際に被害に遭った時に何もできなかったという子どもが5人に一人、防犯ブザーも最新の調査では1%の子どもしかならせていません。

発達段階に沿った、意図的系統的な教育が地道になされなければ、いつまでも子どもは安全基礎体力がついて行かないことは明らかです。

では、誰が、どこで、何を教えればよいのか。

それはもう答えが出ています。

まず何をどう教えるか、ですが、体験型安全教育をますますすすめていくことなのです。誰が教えるか。それは、現場の先生とともに、今、各地で勉強されている地域の防犯のプロ、そう、防犯ボランティアの皆さんなのです。

すでに、静岡県では、県の一大プロジェクトとして、防犯ボランティアの方々が学校に赴き、体験型安全教育を進めるプロジェクトが始まっています。

全国防犯協会連合会も、全国の防犯ボランティアを体験型安全教育の指導ができるよう、育成を始めています。

ともに、地域の子どもは地域で安全に育てること、地道ではありますが、大変重要なことです。次の事件が起きないよう、見守りと教育、早急に進めていく必要があると思います。(清永)

文京区内小学校での体験型安全教育

昨日、文京区立明化小学校で体験型安全教室を行ってきました。一年生は各教室で、2年生は体育館で行いました。教室の中でも机を全部下げれば、たくさん体験授業が行えます。大声を出したり、ジタバタしたり、ロケットダッシュしたりと、子どもたちは保護者や先生方と一緒に学ぶことができたのではないかと思います。

 練馬の事件を受け、保護者の方々はご心配のご様子でした。しかし、見慣れぬ車、見慣れぬ人、はちみつじまんの様子の人がいたら、学校や警察にすぐ知らせる、お友達に伝えるなど、情報をきちんと集めて的確に行動することで未然に防ぐことはできます。6・3・2の法則で、情報をキャッチし、いざとなったらスクラムを組んで、子どもたちを守りましょう、とお伝えしました。